少し前ですが、グラス・マーケッツの朗読公演「白墨奇譚 はくぼくきたん」が東山区東福寺の退耕庵(非公開)にて開催されたので寄せてもらいました。
脚本は角川春樹小説賞も受賞されている池田長十さん。
公演のご挨拶に記載されていました。
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グラス・マーケッツを結成してから十五年が経ちました。その間、ずっと脚本を担当して来た訳ですが、ふと振り返ってみて、これまで僕が書いて来た作品はすべて、三つのパターンに分類出来ることに気付きました。
何かしら物語の核となる出来事を仮に「X」とします。(Xは何であっても構いません。大きな事件であっても、ごく小さな謎であっても何でもいい)
1……Xが起こるまでの話。
2……Xが起こったあとの話。
3……その一連の流れすべての話。
この三つです。
より詳しく書くと、あれこれ起こった末に、Xという事件が起きました、という型か、Xという謎が生まれたことにより、その後はこういう展開になりました、という型。あるいは、先の二つをすべて描いてしまう型の三つです。
僕が書いた脚本は、大概この三つのタイプに当てはまります。
しかし、です。
今回の朗読公演『白墨奇譚』は、実はどのタイプにも該当しません。特に心境の変化があった訳でもなく、殻を破りたいと思った訳でもありません。あくまでも、いつものようにモニターに向かい、いつものように面白いものを書こうとした結果です。
この作品では、Xだけを描いています。Xという出来事だけを切り取った物語になっています。
さて、この新しい類型が僕の中で定着するかどうか、4つ目のタイプとして今後も書き続けるかどうか、その判断はこの公演に大きく左右されることでしょう。
と、実は――今の段階で既に僕の答えは出ています。練習に取り組む読み手たちを見ていれば明らかです。Xという瞬間をどう表現し、どう膨らませて行くか、それこそ彼女たちは練習時間の瞬間、瞬間を頑張ってくれました。
4……Xそのものの話。
ぜひ、お楽しみください。
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朗読公演は、耳が頼りです。
もちろん、舞台演出、衣装、など目から得る情報もありますが、それは映画や舞台と比べると圧倒的に少なく、耳の力がとても重要です。
五感のうちの一つを、ものすごい集中力で研ぎ澄ます。
朗読公演、とても楽しいです。
そして池田さんの脚本、佐野さんの声が大好き。
Xそのものの物語。
墨点。なるほどです。